またね!/もっぷ
ばかりだったけれど。その際の彼女がよみがえる。運ばれてきた定食を見つめる横顔や、食券を「ぼくが買う」といういつもの提案への毎回のまるで遠くの話を聴いているかのようなまなざし。彼女にどこでもいいからと希望を聞いても「家庭のごはんのお店」ばかりを望まれた。遠慮かと、若さゆえにか短絡的にも私は、しかしこちらにも事情があったから、そしてそのことを彼女にも話したことがあったから、そんなことを言う彼女をますます好意的にしか、まったく短絡的に美徳としての慎ましさを備えたひとだとしか見ていなかった。見れなかった、それほどに(二人ともに)余裕もなかった(あの頃の私には「二人とも余裕がない」という思いだけが及べるすべ
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