またね!/もっぷ
すべてだった)。いま、一からのスタートを妻とこどもたち、そして父とにあたたかく見守られ、許されて踏み出してから多少とも日も経ち、私は店に来るお客さんのなかに、時に若き日のあの彼女を彷彿とさせる二十歳前後の無防備を見い出すことも確かにあった。学生時代の彼女と、すぐ目の前の?こどもたち?とが背負っているはずの生い立ちのその深刻さにやっと思い至った私はいきなり?あの日?に呼び戻された。想像を絶する過酷さであったろう現実を生き抜けなかった彼女。ぼくには、なぜだろう、たった一枚の写真と、そのなかの笑顔……
……目を開けると、店の天井があった。体は、万が一の備えである化繊の毛布で包まれており、首を少し
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