またね!/もっぷ
出すのはよしなさい、母さんには伝わっているはずだから」という助言に、どこか父と母とにしかわからない、けれど大切な何かを感じて私は黙って見知らぬひとからの好意を受け取り、進学とそしてその後の学費のためにだけその通帳の中身を引き出した。
大学で一人の女学生と知り合い死別し、会社で、やがて結婚することになる女性と出会ってそしてその後のいまへと続く、これでこの、どこにでも転がっていそうな身の上話は幕を閉じてもいいのだが、つまりとりあえずいま、私は結局、父と同じ道を歩んでいる。そこには、父の歳を考えれば少しでも力になりたいという孝行心もあったし、父が築き上げた城を一代限りで終わらせたくはないという息
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