またね!/もっぷ
う息子としての意気地のようなものも、それももちろんなくはなかったとも言える。実際のところ、父よりもはるかに恵まれての再出発だった、父がすでに家賃のいらない自分の店を持っていてくれたのだから。私は、店側の人間の居場所は父と私の二人分しか考えられない構造の店舗で、豆だけを求めに来る常連のお客さんもいてくれる町の珈琲屋としての、思ってもみなかった裏方の細かくて地味な仕事から教え込まれることになる。その、店番を一人でもやっとまかせてもらえるようになった頃のある日、客足の途絶える時間帯にふと思い出したのだ、学生時代のあの?彼女?のことを。いったいなぜ、彼女は医者にかからなかったのだろう、なぜ、彼女の家族はそ
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