またね!/もっぷ
だけじゃない、だけじゃなくて何だろう……その何かをいまはただ手探りであつめてあつめて、まるで風をあつめるかのように。そう、彼女は風だった、時にそよ風、時に春の嵐のように、時には梢でやすらぐ凪のような、学生の身分に与えられた瞬く聖域のなかでもとりわけ何にも代えがたい、たぶん二度とは出会うことのない可憐な野の花、どこかの、知られぬ高原の孤高のけれどそのことをさびしいとは嘆いたことのない――うそだ、ぼくは打ち明けられていた「こどもの頃からなの」と携帯のない彼女の手書きで「いつもいつもさびしい」となみだの跡もあることをわかっていながらも、ぼくが返せた言葉に果たして彼女にとっての真実救いとなることが出来得た
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