レモンジュース・ダイアリー(2)/由比良 倖
た。城井さんはギターケースを大事そうに大きな節っぽい手で撫でていた。
「無論、君がそう言うだろうことは分かっていたよ。それは多分、彼の手に渡るんだろうね」
「ええ」
城井さんは、カップに角砂糖を二つ入れて、一口だけ飲み、その余韻を味わうように口を噤んだ。それから、
「だけれど私は君にそれを渡すことが出来て満足だ。おそらくそのギターをそんな風に見られるのは、今では君だけだろう。無論、彼がそうじゃないと言うわけではないけれど」
「ありがとう。あなたは優しいひとだわ」
彼は席を立つと、私の部屋にある小さなピアノに目をやった。このピアノも前に城井さんが作ってくれたもので、おそらくはギターを作る
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