木槿/あおい満月
 
この水をあげてください)
そういって彼女は私に、
状差しを差し出す。
(どういう意味ですか)
私の問いに彼女はまた微笑んで、
(あなたが本当に見たいものを
見ることができますよ)
状差しを私に手渡すと、
彼女は忽然と消えた。

***

私はその花に、
じわじわと沸き上がる念のような、
願いのようなよくわからない感情で
水をあげはじめた。
一番頭から離れなかったのは、
母親のことだった。

状差しのなかの水が空になった。
するとどうだろう、
花がまばゆい金色に輝いて、
白い部屋が見えなくなった。
私は暫く踞った。
バリッと硝子が割れる音がして、

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