藝術としての詩/天才詩人
の深夜、雲が低くたれこめたコンクリートの住宅の小さなリビングのテーブルで、俺はその街区の詳細な地図を紙に書いていた。ほんの20年 ほど前、90年代の終わりだった。俺は写真やテクスト、絵画といったあまたの表現ジャンルの壁を突破し、そのむこうにある 「生」の 現実をエンコード(encode)する、あらたな藝術メディアについての決定的な啓示を得た。
そのころ俺は医者からパニック発作だと診断された。 昼間、ブラインドを下ろしたアパートの小さな部屋を避け、丸太町通りの用水路や行き止まりの道路がつづく一画を歩き、日が暮れるとDVDや書籍を売るディスカウントショップのゲートをくぐった。深夜、近くの家電量販
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