小品〜三重奏/ヒヤシンス
君の音が穏やかに流れてゆく。
君は君の旋律を歌い、私は私の旋律を歌う。
ここに彼がいてくれたらと願いながら。
彼はそのヴァイオリンで彼独特の歌を歌う。
彼の旋律は彼にしか歌えない。
感情の襞をこするような美に溢れている。
彼自身忘却の彼方にその歌を歌う。
恐るべき才能。
彼はこのアトリエの住人だった。
そしていつしか流星のように消えてしまった。
森の中に君の全く新しい旋律が生まれた。
私はその美しさに狂喜した。
流れる旋律が私の心に沁み渡る。
彼方に彼のヴァイオリンが聴こえた。
アトリエに置いてあったヴィオラが私を待っていた。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)