小品〜三重奏/
ヒヤシンス
手に取ると音の出ないはずの私のヴィオラから無意識の旋律がゆったりと流れた。
私らの奇跡の三重奏。
月の光が私らを照らす。
私らは心穏やかにそれぞれの色彩を取り戻した。
彼の音色は幻だったのだろうか。
君と私ははっきりと彼の音を聴いた。
その音はまさしく彼だった。
夜空を見上げれば、月の光の帯の中に彼はいた。
彼は優しく微笑みながらゆっくりと天上へ歩んでいった。
今日は彼の月命日であったのだ。
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