不条理の極みを味わう者/小川麻由美
人生は全くもって奇なるもの
嘘偽りを嫌う者は多い
私は私をおとしめない
そんな心もちで生きている
私が言おうとする事柄に
是非とも耳を傾けて欲しい
旦那 それは私と暮らせる者
彼に試練を与えたものを憎む
彼のどこに落ち度があるのか
彼のどこに恨む所があるのか
彼がなぜ辛酸を舐める必要があるのか
全くもって見当がつかない
例えば私
私のがんは見えないところで
傍若無人な振る舞いをして
臓器を凝らしめる
ここに倫理も何もありはしない
例えば義弟
彼のがんは頭蓋骨の中で
肥大し彼を突き飛ばし
左の自由を奪う
ここに良識も何もありはしない
例えば
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