不条理の極みを味わう者/小川麻由美
 
えば義父
彼のがんは耳の表面を侵し
一部を失った耳は仲間を
探すだろう
ここに情けも何もありはしない

旦那 それは私と暮らせる者
彼を愛する者はいるだろうが
彼を憎む者を探すのは困難だろう

なのになぜ
こうも覆いかぶさる
旦那への試練 いや
試練などでは言い表せない
なんとも情けない私
幾千も詩を書いても書いても
いい表せないであろう苛立ち

なんという不条理!
この不条理を抱え
すっくと立つ男
それが私の旦那
それを誇る女
それが私

旦那は一度に
がん患者を3人抱えている
現実とは そういうもの

耐えるしか選択がない
これほどまでの試練を
旦那に与えたものを
私は憎む(揺らぎ)
私は本当に憎んでいいのだろうか
ただただ やるせない
ただただ 旦那の幸福を求む
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