貼り紙世界の果て/カンチェルスキス
った道だが、そこに掲示板があることすら、一度も気づかなかった。気づかせてくれたのは、一人の野球少年だったのである。
夕方、通りかかったとき、一人の少年が川のフェンスに向かって、ボールを繰り返し投げていた。跳ね返ったボールをかっこよくキャッチし、また投げた。溝堀とは大違いである。ただの戯れの遊びでないのは、私にもすぐわかった。彼は熱心に野球の練習をしていたのである。
―ところで、よく跳ね返るフェンスだな―たいていのフェンスはむしろボールの勢いを吸収してしまいがちなのに―。
そんな悠長なことを考えながら、私は橋を曲がった。案内やポスターもない、のっぺらぼうな掲示板が、そこに立っていた。さっ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)