世界/鷲田
消失は精神の消失を意味し、形が無くなれば想像もなくなる。イメージが喪失した世界には色が無く、彩りがない。色を失くした世界、それはもはや世界では無い。なぜなら、世界は色で構成されたcosmoに他ならないからである。色の無い世界に憧れを持つのは、永遠を過信した道下の演出である。何もなく、日々を倒錯して幻想の中を今日も人は歩き続ける。人はその弱さを強さに変える術を身に着け、身を隠し、強さを脚色している。それは人間の傲慢という鈍感な勘違いである。
今日、ここに吹いている風。その風は無色だ。彼等は色を欲しない。だけれども、風は幸福のありかを知っている。本能的に。歴史的に。人類が初めて歩いた時、風は吹い
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