世界/鷲田
 
凛と芽生える。それは薄暗い風景に光が差す瞬間。私達は光の申し子になろうと心のどこかで何時も望んでいる。

私達には新たな物語が必要だ。破壊された過去を再構築する未来の物語が。現実の中では、明日も、明後日も、ましてや10年後も、20年後の未来も見ることは出来ない。盲目な私達の目には、見えない景色が多くある。盲目な私達の精神には、見失っている景色が多くある。過去が未来へと繋がる柱のような、それでいて、糸のような、繊細で緻密な力強い一筋の光が私達には必要なのである。

私は思う。人の一生は幻であって、死んでしまえば何も残らず、記憶さえも今日のような青い空の中で掻き消されてしまうことを。物体の消失
[次のページ]
戻る   Point(6)