血の笑う声/あおい満月
。
心臓を突き破った弾丸は、
雨に煙る窓ガラスを突き破っていた。
めらめらと揺れる焔のなかに、
男はある一枚の写真を沈めた。
写真はモノクロだったが、
美しい女が描かれていた。
透き通るような大きな瞳に、
輝く白い、おそらく金髪であろう
長い髪。
女は男の妻だった。
男は愛という刃物で妻を切りつけようとした。
逃げ回る妻を無理やり乱暴に抱き、
妻の身体を噛みきった。
意識を失った妻に留目を射すために、
放った銃声は、
明け方の長閑な冬の田舎町に響いた。
私は父の過去を知らない。
父は私が昨夜、
私の誕生日を目前に死んだ。
脳梗塞だった。
私は母の顔
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