血の笑う声/あおい満月
 
の顔も知らない。
写真すら見たことがない。
けれど、
鏡に映る私の、
少し藍色を帯びた大きな目の色や、
ウェーブがかった麻栗色の長い髪は、
母から受け継いだものだ。
知人の話によると、
私の母は異人だったらしい。
父は紛れもなく日本人。

私は昔から父が苦手だった。
機嫌が悪くなると幼い私に噛みつくかのように襲いかかろうとする姿は、
獣だった。
一緒に暮らしていた祖母がいつも庇ってくれた。
祖母は私が幼い頃から、
(いいかい、
この先何があっても生き抜くんだよ。
おまえはなにも悪くないんだからね!)
と手を握ってくれていた。
(なにも悪くないんだからね!)が
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