風の寅次郎/服部 剛
ゃがんだ僕の隣に腰を下ろした
「なあに寂しい背中してんだい、
いいか、好きな女ができたらな、
相手がどう思うかより、
こっちが女を想ってやることが
だいじなんだよ」
「愛情なんて、たやすく育つ花じゃないんだから、
うまくいかない時があってもあきらめず、
そっと水をそそいでやるんだよ」
「俺の生き方かい・・・?
なあに、人生長く生きても夢みたいなもんだから、
自分らしく生きただけよ」
そう言い残して
風になったとらさんは
向こう岸へ消えてゆくと
川の水面(みなも)は静かにざわめき
流れは少し早くなった
見上げた青い空には
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