風の寅次郎/服部 剛
葛飾区民センターの和室で
僕等は持ち寄った詩をひとりずつ朗読した
ある者は
「人間はそれぞれに
どこか不完全な楽器のまま
自分らしく奏でる音色は美しい」
と読み
ある者は
「今夜はひときわ星の輝く夜だ
寂しい背中で家路に着く全ての人に
星が優しく笑いかけたらいいな」
と読み
ある者は
「お寺でお祈り終わったら、かくれんぼしよ!
と言って賽銭箱の前で
ぎゅっとあわせた手をおでこにあてている
男の子と女の子の後ろから
仏さまのまなざしのような
あたたかい陽(ひ)ざしが降りそそいでいる」
と読み
[次のページ]
戻る 編 削 Point(12)