冬の針/あおい満月
 
練は与えないと
信じて、ただ信じて、
手探りで社会の海を泳いできた。

**

いつからだっただろうか。
私がぬかりなき愛を貫こうと
走り出したのは。
それは、十五歳の頃の夏の夜から始まったと信じている。
恋を覚えた私は、
自分の恋心をぐじゃぐじゃと
引っ掻いた。
そして、引っ掻いた血が、
烈火になって歪んだ愛をつくりだした。

***

あなたはすべてを、
見通していた筈だ。
私があなたから産まれて、
私の欠陥を知った日から。
そう、あなたはすべてを見通していた。
ただひとつ、
社会と向き合う人間に育てること。
ただ、それだけを願って。

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