大陰唇論/花形新次
堕落論の中に反戦思想を読む人の気が知れない。
十代前半から四十代後半の今までに少なくとも2万回は読んだが、
何回読んでも、8割りがたは戦争礼賛にしか見えない。
事実、戦争中ほど良い世の中はなかったと書いているぐらいで
戦争反対等とは一言も言っていないのだ。
もし堕落論を読んでこれは反戦論だと思った人は
文学には向いていないので、ラジオ体操でもしてください。
安吾が言いたかったのは、そんな良い世の中を作り出している人間たちの健康的で善良な姿が、ウソ臭くインチキなものだと言うことだ。
そして、そんな見てくれの良い上皮を脱ぎ捨てないと、人間の真の姿なんて分かりっこないと言っているのだ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)