黄金虫/
あおい満月
の窓越しの空には、
童話のような、
見覚えのある細い月が浮かんでいる。
**
一人急ぎ足で帰る夜は何度目だろうか。
背後から誰かの黒い自転車が、
割れた硝子瓶を持って後をつけてくる。
そんな想像が、
両手一杯にひろがって
呼吸を荒くさせる時間が。
家に帰りついて
一本の冷たいペットボトルを飲み干すと、
今度は笑いが漏れてくる。
顔のない笑い。
笑いは腕
[
次のページ
]
戻る
編
削
Point
(9)