黄金虫/あおい満月
 
は腕の毛孔から
ふつふつとわきあがって、
足元の小さな黄金虫の舌におりてくる。

***

黄金虫の舌は、
誰かの舌に似ていた。
冷たくて、
メロンの味がして。
そうだ、父親だ。
昔小さな頃、
父親に口通して、
メロンの味の飴を貰った。
緑色の舌をだして
笑っていた父親は、
ちょうどこの黄金虫の緑色の背中に似ていた。
私は虫が触れないから、
黄金虫よ、
明日は一人で
草むらに帰っておくれ。
切々になっていた階段は、
いつの間にか列をなして波にのって夜を漂う。
無傷な朝のために。


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