普通の愛/もり
 
て5400円。引く交通費660円。引く煙草。引く昼飯、晩飯・・。
僕は毎日積み上げて、
積み上げては崩して、それをまた積み上げる。心だけが一方的にすり減っていく日々に。

16時。駅から夕美に電話する。
「今日、行っていい」
珍しく二つ返事で了承してくれた。良くも悪くも言葉少なめなところが彼女のいいところだ。
昔のことも、アテにならない未来も聞こうとはしない。興味がないだけかもしれないが。「考えすぎよ」
って言うだろう。人は誰も過去を背負い込んでいる。いや、厳密に言うとこびりついている。過去の集積体、なんだが。夕美はまるで、人はその一日一日に生まれ変わることをまだ信じているかのよう
[次のページ]
戻る   Point(2)