普通の愛/もり
 
は、スーツの若人に先導され、バスに乗りこむ。先週も見た顔がいる。
そろそろ散髪したほうがいいんじゃないか、なんて思っても、永遠に口にすることはない。
言葉にはもう飽きたんだ。
「おい、19番」
派遣先の社員がそう呼ぶ。Tシャツにプリントされた番号。浅ましい渾名だ。童顔だからって、舐められては困る。僕は指示されたシマの中から、いくつかの封筒を抜き取る。そして、それ以外を梱包した。
大企業の株主優待券が封入された封筒。おべんちゃらにまみれた文章。
自然界への無差別テロ行為。
糾弾する者のいない世界で、ブタは本当に安らかな顔をしている。
今日は6時間で仕事が終わってしまった。日給にして5
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