難破船/あおい満月
『難破船』 あおい満月
(書きたいなら、食べなさい)
誰かの声に瞬きをすると硝子の壁の向こうに、
肉や魚や、
色とりどりに切り刻まれ、
煮込まれた野菜たち、
パンや湯気を立てるパスタやご飯がある。
硝子の箱のなかの私は、
見つめることだけしか出来ない。
(書きたいなら、その硝子を割りなさい)
背中を引っ張る誰かの手を探して
私は硝子を思いきり叩き割る。
血まみれの手にフォークを握り硝子の破片で
切れた口にいっぱいに肉や魚や野菜をほうばる。
食卓の上の食べ物はいっこうに減らない。
私の腹もいっこうに満た
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