疋田龍乃介詩集『歯車VS丙午』について/葉leaf
 
あり、支配的言説はそのような暴力を即座に圧殺するだろう。だが、疋田の詩はちゃんとウケを狙っているのである。つまり、支配的言説による圧殺を回避するために読者に対する責任に応えつつ、同時に自己の自由な言語空間を展開していく。支配的言説に受容される道を開きつつ、同時に自己の自由な創造力を発揮させる。そのことにより、支配的言説を内部から侵食していく。

いぬがひ、げのがん、
そうやって剃ったばかりの無精ひげを
すべり台の上から流しながら
一緒にサイコロを転がしている
出目が5なら
僕の犬がひげの癌にかかり
そのとき育てた大根は温かく
貪っていた犬が
ほくほくしていたから
      
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