無重力ラボラトリー/カワグチタケシ
 
隠れる
彼女はラボの灯りを消して
冷えきった部屋に戻る
暖房のスイッチを入れて
彼からの通信を待つ

乗り換え駅の
マクドナルドの二階で彼は
ガラス窓の隅に吸盤で
デバイスをセットし
成層圏に向けて
アンテナをのばす

地上は午後十時
証券会社のビルディングのうえに
星がひとつまたたいている

季節はなぜ待たないのか
雑音にまぎれて彼の小さな問いが聞える
彼女が答える
わたしたちには繰り返す風景が必要なの

ゆっくりとそして避けがたく
僕らは星に到達するために死んでゆく

なぜ

僕が育った庭の話をしたかな
そこには小さな砂場があった
砂場
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