アンゼリカの正体/そらの珊瑚
 
教科書で見た「モナリザの微笑み」ほどではないけど、ひとさじの悲しさを含んで微笑んでみせるから、彼女はきっとあたしによく似た身の上なんじゃないだろうかと想像する。

ねえ、なんであたしにはかあさんもとうさんもいないの? と、ばあちゃんに千春は聞いたりしないし、くよくよそれで悩んだりもしない。

その代わり、――人生で代わりになるものとならないものがあるけれど、ケーキの上にのってるこの緑色の物体は何? と質問する。
ばあちゃんは、あたしゃ学がないからわからんねえ、と答え、取り分けたケーキをわしわしと箸で食べた。

千春は大人になって「アンゼリカ」の正体が、植物のフキの茎だったと知る。その
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