夕鶴奇譚/ただのみきや
わたしはあなたの最後の正気のひとかけら
あなたの妄想の中で家政婦をしているものです
その機織りの糸を切れば悪い夢から覚めましょう
あなたは「与ひょう」ではありません
あなたは言葉狂い
誰からも認知されない自称の詩人
いつの頃からか詩の中の詩人に詩を書かせ始め
その詩の中へ実の生活を逐一詩へと変換して行った
少しずつ少しずつ現実を歪めさせながら
やがて詩の中で詩と変えられた奥さんも子供も殺して
言の葉の綾なる柄とした
おつうさんもこの詩の中であなたに犯され殺された
言葉狂いの鬼が喰ってしまった
この詩の中であまりにも長く過ごしたあなたは
己が詩なのか詩人なの
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