埋めるために1.10/竜門勇気
は暖かかった
けどまるで何もくっつけられなかった接着剤みたいに
小さな体は硬くしぼんでいた
眼球はもう、何も見ていない
それがよくわかるほど乾いてしまった
何度も閉じようとしたけれど
まぶたは頑なに瞳を世界にさらすために持ち上がった
眠るよりもずっとたくさんこの景色を見ていたね
僕が大事に思う時間に
お前はこの景色を見ていたね
鋤の火花
妹の涙
母の泣き顔
父のとても寂しそうな横顔
僕は埋めたくはなかった
埋まるようなものじゃなかった
埋めて、埋まるような空白じゃなかった
土をかぶせる
花を添える
コートのフードを雨粒が叩く
不思議なことに
また雨粒は
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