『サフランの髪飾り』/座一
たので、考えることさえ、ただがらんどうにすっぽりからっぽで、大音量の耳当てで、押さえつけて、押さえつけて、歩くことがすべてだと思うしかなかった。
山を駆け上がるのに、突風列車は、倍以上の燃料が必要だった。
炭鉱夫みたいに体も顔も真っ黒になった車掌が、自分の身に付けているきらびやかなサファイアやエメラルド、ダイヤ等の宝石が埋め込まれた、指輪や、金のブレスレット、自分の頭にかぶっていた燦然とした輝きをもつ王冠を、次々とボイラーに放り込む。
たくさんの高級貴族たちが愛した、欲した、奪い合った、悲鳴のようなものが、燃料に代わる度に叫ぶ。
どんどん どんどん、列車は加速してゆく。もう半分ぐら
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