クラブマリノス/草野大悟2
繰り返しても答えは出てこなかった。
「山脈」には少し早めに着いた。倉岡はまだ来ていなかった。この喫茶店は照明が程ほどに暗く、客席も柱などで仕切られているため、誰からも邪魔されずにじっくりと話をするにはうってつけの店だった。
倉岡は、十二時を少し回ったころやって来た。濃紺の背広に真っ白いシャツが長身の彼によく似合っていて、とても刑事には見えなかった。
「倉岡さん、お忙しいところ申し訳ありません」
立ち上がって頭を下げた。
倉岡は、にっこり笑った。この笑顔を僕はとても気に入っていた。倉岡は、トアルコトラジャを注文した。僕も同じものを頼んだ。
コーヒーが運ばれて来ると、ゆっくり飲
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