クラブマリノス/草野大悟2
。お金いっぱい貯めて海の近くで商売する」
「海か、海の近くか・・・ 早く、そうなるといいな」
僕は、倉岡とイリアの間に漂う、お互いを気遣うような微妙な空気に気付いた。しかし、この場では話題にしない方がいいような気がした。
倉岡は、イリアに新しい時計を約束して店を出た。彼のカシオのデジタル時計は午前一時を表示していた。エレベーターで一階まで下り、ビルの外に出ると粉雪が舞っていた。
大学卒業と同時に離れ離れになった相良君には手紙も出していないし、メールもしていない。その方が彼も喜ぶだろう、きっと。
かつて愛人関係にあった男がふいに訪ねて来たり、メールをよこしたりすることは、彼にと
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