クラブマリノス/草野大悟2
時計を欲しがっていたことを思い出し、時計専門店で時計を買って、その日の夜、久々にマリノスに出かけた。
一年ぶりに見るイリアは、ますます女っぽく、美しくなっていた。倉岡が腕時計を渡すと、
「お父さんのと同じ。これで私お父さんの時間が判る」
倉岡に抱きついて、全身で喜びを表わした。
イリアは、この時は三ヶ月だけ働いてロシアに帰っていった。その後、渡り鳥のように日本との行き来を繰り返し、今回で五回目の来日になる。来日回数が増えるのに比例して、彼の日本語は上手くなっていった。
「イリアはいい子よ。ううん、ここに来る子はみんないい子。家族思いなのよ、日本人と違って」
蛍ショーを終わっ
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