クラブマリノス/草野大悟2
から、「可哀想、あそこまでやる必要ないよ」という呟きが漏れた。僕が密かに憧れている相良君の声だった。相良君は、色白でハーフのような面立ちの男の子だった。
監督は、相良君も隣に腕立て伏せの格好で並ばせ、道着の下を引きずり下ろして、剥き出しになった尻を竹刀で力一杯打った。相良君の白い尻にみみず腫れができ、やがて血がにじんでくるのを僕は横目で見ていた。
「いいかぁ、貴様ら、今度練習で手抜いたら承知せんからな! 判ったか!」
「はい」
「声が小さーい!」
「はい!」
「ようし、今日は上がってよーし」
監督はそう言い残し、道場から出て行った。
「相良君ごめんね」
「いや、いいよ、君のせ
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