クラブマリノス/草野大悟2
 
のせいじゃないし」
「でも、血が出てるし」
「そーお? ママにどう言い訳しようか?」
「そのまんま話せば? 監督に竹刀で打たれたって」
「そうだね、そうしようかな」
大きな目を伏せてしょんぼりと頷く相良君は、いたずらが見つかって叱られた少年のようだった。
 
 大学でも、似たり寄ったりのシゴキが、当然のように行われていた。
大学二年の夏、クマゼミがうるさく鳴き、押しつぶすような暑さが僕らを包んでいた。
 彼は、僕と同じ大学でやはり柔道部に所属していた。高校時代と少しも変わらない瞳と小柄な躰をしていた。
 相良君も僕に好意を寄せているようだった。
 夏休みに入ったばかり
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