現場のへその緒(2)/Giton
 
れているものは、いずれも作者の(そして読者の)目に見えている景物──“見えるもの”です(注:じつは、かならずしもそうは言えません。しかし、この数年前の時点では、私はそう思っていました。)
それに対して、「くらつと」、「騎手はわらひ」──これらは、見えているかどうかうたがわしいのではないか‥
“見えるもの”の風景から跳び出して、‥いわば浸食されずに残った熔岩の残丘のように、‥まるで読者の鑑賞を妨害するために置かれているようにさえ思われるのです。

そのころ、私はそう思って読んでいました。
そして、「見えるもの」と「見えないもの」の対比の妙を、この長大な詩篇に追いかけ始めました。この視角は、
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