娘のこと/はるな
うな(でもこの二か月半ですばらしく成長している)手のひらで、わたしの腕を触ってもくれる。黒目が大きくて―人間の眼球の大きさはほかの部位とくらべてあまり大きくならないために、赤ん坊は須らく黒目がちなのだそうだ―、鏡のように濡れている。あんまりひかっているから、そこにうつるわたしの影が黒くつぶれて、なくなってしまいそうだ。そして抱きしめると、抱きしめたぶんの重みと温度が行き交って、だんだんわたしも落ち着いて、あたたかくなる。
娘を抱いたわたしを夫が抱いて、熱い、と言う。夫は娘を持つ男性の顔をして笑うので、わたしはすこしさびしい。夫はわたしの父親ではない。わたしの身体は出産を経ていまだにすこし厚みを増
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