僕が『小説』を書くきっかけになった、とても小さな出来事 (短編小説)/yamadahifumi
しかも廃棄弁当ももらえるので割は良かった。朝勤の高校生と文学の事について話して、仲良くなったりもした。でも、事態は別に大して変わったわけではなかった。僕の小説は相変わらず、子供の書く「お話」を超えたものではなかった。
そんなある日、僕は帰省した。お盆だったと思う。親がたまには帰ってこいとしつこく言うので、仕方なく僕は帰省する事にした。実家に帰るのは大学生以来だった。僕は自分が二十六歳にもなって、何者でもないという事に恥じ入るようになっていた。二十歳の頃には、何もかもがうまくいくと思っていた。その頃僕は、早々に小説家としてデビューするつもりでいた。しかし現実は甘くなく、僕は同級生達よりも劣る
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