僕が『小説』を書くきっかけになった、とても小さな出来事   (短編小説)/yamadahifumi
 
劣るただのコンビニ夜勤者に過ぎなかった。プライドの高い僕には、その事は恥ずかしい事に思えた。だから、実家に帰るのも嫌だったのだ。そこで昔の友人達と会うのも嫌だったし、親と顔を合わせるの嫌だった。しかし僕はもう新幹線に乗ってしまったのだった。だから、その屈辱に一人で耐えるしかなかった。

 家の最寄り駅から、僕はわざと徒歩で帰る事にした。駅から実家までは歩いて三十分ほどあるが、僕はその少し遠い道のりを、わざと噛みしめるようにゆっくりと歩いた。…町の風景は、大学生の時に帰った頃とほとんど変わっていなかった。ただ一つ、二つ、畑が潰され駐車場になっていたぐらいのものだった。

 そして、その道程で
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