人間の本質を露呈させるものとしての文学/yamadahifumi
 
らなければならない。そして何よりもまず、自分自身の人生から学ばなければならない。人間がいかに愚かで惨めであるか、あるいはいかに崇高で美しいか、そういう事を人は生活の中で知らなければならない。そしてこんな事は当然、ノウハウとしては伝える事はできない。だが、そういうものがなければ、本当の意味で豊かな小説を書く事はできない。従って、ある傑作小説というのは常に、その作品を通じて世界に対して広がっている。それはそれを形作ったものを通し、あるいはその作品を構成した、その世界全体に対して開かれている。そしてつまらない作品は、文学という内部に閉じている。以上のような事は今、小説というものを考える上では大切な問題だ
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