ミシェルウェルベック『素粒子』書評/yamadahifumi
た。(ミシェルの母親も自由主義の元、自分が幸福になる事を求めて子供を捨てて、結局の所は不幸な人生に終わった。)この祖母は、おそらくフランスの古風な女性であり、短い青春時代の後、ただ生活の労苦にまみれて生活した人間だった。彼女は人生の中で懸命に働き、そして子供達をとにかくも育て上げた。この祖母の人生は正に周囲の為に捧げられたものだった。
「(略)そして愛情。こうしたいっさいを、この女性は一生を通じてなしとげたのだ。人類についていくらかなりと網羅的に検証しようというのであれば、必ずやこの種の現象にも注意を向けなければならない。歴史上、こうした人間もまた確かに存在した。一生のあいだ、自分の身
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