(1960?1993)/佐々宝砂
 
フランケンシュタインの怪物を俺は覚えている。
俺は子どもの時から頭が冴えていて、
誰よりも記憶力がよかった。
だから俺は超難関の試験をいくつもクリアし、
極秘の指令を受けて宇宙に飛び立つ人間として選ばれたのだ。
そうだ、俺は人間だ、それを忘れてはいけない。
俺は記憶力がいい。
今だっていい。
フランケンシュタインの怪物を俺は覚えている。
あの醜悪な姿。
人工的な怪物。
俺は違う。
俺は人間だ。
おれは人間だ。
おれはにんげんだ。
お・れ・は・に・ん・げ・ん・だ。

俺は忘れない。
俺は記憶力がいい。
俺は身だしなみに気を使うたちだった。
いつだって上着の衿は
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