聖徳太子/竜門勇気
何者にも私をあざ笑ってはいけない。しかしあの声はわたしの言葉なのだ・・・
かつての己なのだ。愚かだった。哀れだった。人との関わりを断って人だということを忘れようとしたのだ。
駆け下りる斜面に何度となく打ち付けられながらわたしは私に戻っていった。
その私の背中で何度か銃声が聞こえた。緩い弦が張り詰めるのを聞いた。
私を追い越してウサギや獣たちがジグザグに視界に現れては消えていく。
最後のつもりで音の方を向いたが一瞬のうちに日は沈んでいて、暗闇にフラッシュライトがチカつくのが見えただけであった。
出来の悪い息子がついに山を降りたと両親は喜びに震えて私を迎えてくれた。
これから苦難は
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