きつねのよめいり/そらの珊瑚
川伝いに伸びる
でこぼこ道の向こうから
菜の花がきれいね、と
懐かしい人が
光をまとってやってくる
どこかで硝子製の呼び鈴に似た
澄んだ鳥の声が響く
あなた、
ずいぶんともう
大人になったのね、と
ほほえんでいる
夢に出てくる人は
雛人形のように
永遠に年をとらない
涼しい目元の少女のまま
二国峠に
さしかかる頃
ふいの天気雨
小さな社の軒先を借りる
昨年、故郷の大銀杏に雷が落ちた話をすると
覚えてるわ!
学校帰りによく遊んだわね
じゃあ、あの樹のうろに
一緒に隠した宝物も
燃えてしまったのかしらと
小首をかしげて少し残念そう
運が悪いと
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