もうひとつの童話/ハァモニィベル
街を歩くと背中ばかりだという
マッチ売りの少女が死んでいる通りを過ぎ
崩壊したまま放置された幸福の王子の像の前で待ち合わせしてる
みにくいアヒルの子のように悄気(しょげ)てるお前が愛(いとお)しい
通りは狼とデート中の楽しそうな赤ずきんばかり
忠告など、頭巾に隠れた耳には遠くて
時折、オオカミだぞ!と叫ぶ少年の声は虚しい
路地で迷子の、グレてるグレーテルがお菓子の家に誘われて眼を輝かしてる
家で寝息をたてる眠り姫は とくに朝が眠いらしい
朝食も弁当も作らず、夜帰宅してもやはり眠ったままだ
一本足のブリキの兵隊と踊り子のような俺たちだったのに
起そうとして接
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