北の亡者/Again 2014如月〜皐月/たま
ペタリと坐り込んで
骨の形になってしまった五体が 息をする
年老いてなお も吉はかわいい
痛めた両足に 妻の靴下を履いて
道往くひとがふり返る
滑稽な お爺さんになっていた
梅雨入りの頃から
も吉の身体が妙に温かいことに気付いていたが
もうすでに 季節は立ち止まっていた
めずらしく晴れた 休日の朝
も吉はもう 立つことができない
おしっこが溜まっているはずなのに
辛いと言って 鳴くことさえできなかった
おむつをつけたまま 一輪車に乗せて
いつもの公園へ連れてゆく
桜の木は きれいな若葉
も吉の腹に腕を回して 立たせてやる
さぁ おしっこしよう
誰も
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