配慮/Lucy
 
内に野生動物が侵入しました」
急停車するたび放送はこう告げた
「大変お待たせいたしました
異常がありませんので、発車いたします。」

異常が無かった
つまり衝突の危険は回避され
鹿は無事だったのだろうと
敢えて私は思った

何度目かの急ブレーキの後
私は車窓に顔を押し付け
カーテンで車内の灯りを遮って
外の暗闇に目を凝らした
すると白い鹿のお尻がふわり
ふわりと跳ねて
闇の奥へ吸い込まれていくのが見えた
一頭、また一頭
おそらく集団で線路を横断していたのだろう
列車がゆっくり動きだし
灯りのある所を通過すると
おびただしい数の鹿の群れが山へ向かって
次々
[次のページ]
戻る   Point(24)