美しい薔薇も見ないで/ハァモニィベル
本突き立てたまま、ずっと外を見ている
向こうに幽かに見える黒染んだ灰色の
絞首台のある病院に死の予約を待つ行列を見ながら
その無数の人生1つ1つを、作品として鑑賞しているとでもいうのか
ならば、一輪の薔薇を背負った猫よ
友情の手触りをおしえてくれ
愛情の匂いをおしえてくれ
即興の颯爽が高飛びの棒を折り
脂ぎった憐憫と、笑うような陽射しに犯されたあとで
雄弁な聖母が差し出す紛い物の冷たいぬくもりを
吸い取って膨らんだ虚無の裏側で同情に凍えて
萎び果てた憂鬱は過呼吸にのたうつ
慎ましく縮れた未来に踊る脛毛のように
*
一輪の薔薇を背負った猫よ
い
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